焼肉店開業のポイント
ターゲットの設定と内装デザイン
ターゲットの設定
シングル、シニア層の富裕層をターゲットとした高級焼肉店、ファミリー層やカップルをターゲットとしたカジュアル焼肉店、食べ放題メニューをメインとした大衆焼肉店などがあげられます。感染症対策でひとり席や個室を希望される方も増えてきており、全体的に内装費があがる傾向があります。
高級焼肉店のデザインと傾向
カウンター席、個室、半個室を設け店内はゆとりあるレイアウトを心がけます。接待にも利用でき、静かに会話を楽しむことができるような配慮が求められます。内装は黒やシックな色の木目が多く使用され、間接照明やスポットライトなどを用いて高級感を作り出します。ポイントに石やタイルを用いて陰影の美しさを表現したり、アンティークな家具を配置し、隠れ家的な佇まいを演出したりします。
カジュアル焼肉店のデザインと傾向
カップルやファミリー層をターゲットとしたカジュアルな焼肉店のデザインは、汚れが目立たない少し暗めの壁面に明るめのテーブルや家具を配したものが多い傾向です。スポットライトでピンポイントに各テーブルを照らし、開放的な空間の中にも個の雰囲気を演出したり、天井をスケルトンにしダクト管をインテリアとして見せるデザインも好まれています。
設備設計のポイント
ロースターの種類
焼肉店の設計のポイントは、吸排気設備とレイアウトです。内装工事の1/4から1/3程の金額を占めるダクト工事の金額を抑えることは必須となります。炭焼きのこだわり焼肉を提供する店舗以外は、煙を抑える無煙ロースターを設置する店が多く、その種類によってダクトを配管する位置に違いが生じます。
・上引きタイプ
テーブルの真上に排煙フードを設置し、煙を直接吸い込み排出するタイプ。排煙フードが見えることで煩わしさがありますが、低コストでの施工が可能となります。
・ダクトタイプ
ロースターテーブルから床下のダクトに煙を排出するタイプ。フードに頭をぶつけたりする危険がないため多くの店舗で採用されているが、テーブルを床に固定することで、レイアウトの変更がききにくいことや床をダクト分かさ上げしなければならず、天井の低い物件には不向きな面があります。
・ノンダクトタイプ
上引きタイプのものと比べ、3、4倍程と機器が高額ですが、ダクト工事の必要がなく、店外への煙の排出もなく、可動できるメリットがあります。
吸気と排気バランス
焼肉店は吸気と排気のバランスが大切です。 バランスが取れていないと、エアコンの利きが悪くなったり、出入口の扉が重くなったり、肝心な煙が排出されず店内に溜まってしまうこともあります。焼肉店の設計に慣れた設計事務所に依頼することが、安定した経営を実現することにつながります。
排出ダクトの協議
煙はダクトを通して店外へ運ばれますが、近隣店舗への影響を考慮し、吐出口を屋上まで延ばさなければならないこともあります。ダクトを1階から屋上まで壁面を這わせなければならず、取付用足場費用も加算され工事費も莫大なものとなってしまいます。 開業後にクレームが発生しないよう、事前にビル側や近隣と協議を行い排出ダクトの確認、調整を行う必要があります。
内装仕上げ材のポイント
優れた排煙設備を導入しても、煙や油が什器、壁、床、天井についてしまいます。内装材はお手入れがしやすい素材で、汚れが目立ちにくく、シンプルな構造のものを選択します。
適した素材
- メラミン化粧板
- タイル
- ステンレス
- ハードクロス
- 高意匠性装飾フィルム
メラミン化粧板
メラミン化粧板は表面硬度が高いため耐久性に優れ、耐汚染性、耐熱性もあり拭き掃除もしやすく、デザインも豊富です。壁面、什器にも多く使用されています。 タイルは磁器質タイルで比較的凹凸の少ないものを選びます。目地部分に汚れが溜まり変色することになるため、目地の色も考慮する必要があります。高価で施工性が劣りますが、タイルのもつ存在感、光沢性などは他では補えない魅力的な素材です。
ステンレス
ステンレスは防汚性、メンテナンス性に優れていますが、高額なことと、温かみを演出しにくいため、使用するところが限定されます。硬度な金属のため、現場での加工には不向きです。
ハードウォールクロス
ハードウォールクロスは特殊樹脂を表面にコーティングし、表面強度とメンテナンス性を高めたビニルクロスです。比較的安価のため、初期投資を抑えたい場合にお薦めしています。一般のクロスに比べ、表面が強化され、傷がつきにくく耐久性に優れています。
高意匠性装飾フィルム
ダイノックシート、リアテック、パロアなどの塩化ビニル樹脂の高意匠性装飾フィルムで耐久性、耐水性、耐汚染性に優れています。メーカーによって価格帯、施工性、デザインなどに違いがあります。安価な壁紙とは4倍程の価格差はありますが、本物に近いリアル感が表現でき、さまざまな用途に施工が可能です。
焼肉『江戸牛小川町店』の施工
東京神田にある黒毛和牛A4・A5ランクのお肉やホルモンを提供する切り売り焼肉店の2号店『焼肉江戸牛小川町店』様の施工を承りました。 居抜き店舗からの改修ですが、前店舗の牛かつ屋さんからのイメージを一新すること、大衆的な雰囲気の中に清潔感を感じることができるようレイアウトや内装仕上材を選定しました。
おひとりでもグループでも気兼ねなく焼肉を楽しんでもらえるよう、カウンター席を7席、テーブル席は5卓にて設計。 各テーブルのロースターに上引きフードを設置し、天井をスケルトンにしダクトを露出させ見せる天井を演出しました。厨房、トイレの配置はそのまま活かし、焼肉店には少し広めの厨房に事務スペースを増設し、スペースを有効に活用しました。 内装はシンプルで明るめの色を用い、天井は店内の圧迫感を解消するためスケルトンを採用しています。
10階建てビルの1階に入店したため、排煙ダクトをビル屋上階まで延ばさなければならず、取付け用の足場費用も含めたダクト工事にコストがかかりました。 焼肉店の内装工事の多くを占めるダクト工事を効率よく設計し、費用を抑えるポイントを把握、提案できることが焼肉店の設計施工には必要なことだと考えます。